すべての、白いものたちの ハン・ガン

熊太郎


すべての、白いものたちの ハン・ガン 斎藤真理子・訳 河出書房新社


  2024年(令和6年)ノーベル文学賞受賞者が書いた本です。作者は、1970年(昭和45年)韓国生まれの女性です。

 まずは、ざーっと最後のページまでめくってみる。

 詩? 

 感じるための短い文章?

 全体で、172ページありますが、文字数は少ない。

 173ページに、『作家の言葉』があります。

 日本で言うところの、著者あとがきだそうです。

 最後の日付は、『2018年春』とあります。平成30年ですな。

 

 181ページに、『すべての、白いものたちの』への補足とあります。斎藤真理子さんという方の文章です。韓国語タイトルの直訳は、『白い』という言葉だそうです。

 白いものたちとは何だろう? 白人という意味ではなさそうです。

 単純に、白い色をしたものというとらえかたのようです。

 白でイメージするものは、純白とか、潔白とか、素直とか、基本とか、そういうものです。

 

 188ページに、平野啓一郎さんの文章で、『解説 恢復(かいふく)と自己貸与(じこたいよ)』というものがあります。むずかしそうです。

 (この本は、小説というより、連作散文詩といった趣である(おもむきである)とあります)

 過去と現在、自己と母、早世(そうせい。早くに亡くなった)した姉、兄、ソウルのこと、ワルシャワ(ポーランド)のこと、よくわかりませんが、恢復を巡る特異な思想があるそうです。(わたしに理解できるだろうか?)


 最初のページに戻ります。

1 私

2 彼女(母親のことだろうか?)(ちがっていました)

3 すべての、白いものたちの

 以上のようなつくりです。


(1 私)

 しろいものが並べて書いてあります。この本を完成させるためには、しろいものが必要だったそうです。

 おくるみ、うぶぎ、しお、ゆき、こおり、つき、こめ、なみ、はくもくれん、しろいとり、しろくわらう(?)、はくし、しろいいぬ、はくはつ、寿衣(じゅい。死に装束(しょうぞく))

 それぞれ関連があるようで、関連はなさそうです。(読み終えて関連があることを感じました)

 どこかの国の不慣れな首都にしばらく滞在するそうです。東京だろうか。(ポーランドの首都ワルシャワだそうです。本のうしろのほうにちらちらと文章があります)

 時間の感覚が尖る(とがる)そうです。読み手のわたしは、ハテナ?です。理解できません。忙しいとう意味ではなさそうです。

 う~む。心の底にある世界を表現されるようです。

<「ドア」という短文>

 思い出の記憶か。借りた301号室を白いペンキで塗りまくります。室内を塗って、玄関ドアも白く塗ります。

 室内の壁を平たい刷毛で白く塗る。窓の外には白い雪が降り続いている。

 その風景をわたしはぼんやりと見守っている。そんなことが書いてあります。

<「おくるみ」という短文 さきほどのリストにありました>

 命の誕生(あかちゃん)についての文章があります。

<産着(うぶぎ)>

 死産のことが書いてあります。作者の母親は死産をしたことがあるそうです。

 生後2時間で、こどもさんは亡くなっています。出産は、8か月の早産だった。母は教師の妻だった。

 その女の子を、『タルトック(丸いおもち。満月のような形状だそうです)』にたとえてあります。

 生まれてまもなく消えた命がありました。

 母親が22歳の冬だった。

<タルトック>

 読んでいると、青森県にある恐山(おそれざん)を思い出します。

 亡くなったあかちゃんは、おもちのように白かったそうです。清らかだった。穢れがなかった。(けがれ:不純)がなかった。

 

 犬の話になります。こどものときに飼っていた、『シロ』という名前の犬です。真っ白な犬が、寿命で死んだ話です。

 

 『白』は、『死』に通じるのです。

 お話の中心に自分(作者)がいる考察手法の文章です。

<霧>

 過去のことの話が続きます。文章は、ずっとこんな調子なのだろうか。暗い雰囲気が続きます。

 この見知らぬ都市=東京ではないようです。ヨーロッパにある都市です。それとも、空想だけの都市だろか。(ポーランドのワルシャワでした)

<白い街>

 ヨーロッパの雰囲気です。1945年、終戦前あたりの時期です。空襲です。

 ナチスドイツのことが書いてあるので、ヨーロッパで起きた空襲です。

<光ある方へ>

 ユダヤ人の話が出ます。ゲットー:ユダヤ人収容区域のこと。強制居住区。

 作品の素材に、『戦争』があります。

 『霊』の話があります。生後間もなく亡くなったあかちゃんの霊です。

<彼女><ろうそく>

 死産した女の子を、生きているものとして、空襲下の戦場に立たせます。

 『白いもの』を、(私が思うに)平和として表現してあります。


(2 彼女)

 さきほどの、死産のあかちゃんを、『彼女』としたのだろうと予想して読み始めましたが違っていました。

 彼女の名前は、『雪栄(ソリヨン)』で、小説家の朴泰遠(パク・テウオン。1930年代に活躍した。1986年(昭和61年)76歳没。法政大学への留学歴あり)の娘です。

<霜><翼 (蝶が出てきます)><こぶし (戦争の話題から離れていく)><雪 (雪に着目する文章群です)>

 感受性が若い。十代後半ぐらいの感受性です。

<万年雪 (汚れた人間界に対する反発すると、人は命を落とすこともある)><波><みぞれ><白い犬 (吠えない(ほえない)犬のこと。虐待されて育った犬のこと。いつも人間におびえていた)><吹雪><灰 (母の納骨です)><塩 (インスタレーション:現代美術の手法。特定の空間が作品。体験させる)><月 (なんというか、嘆き(なげき)と愚痴(ぐち)が続きます)><レースのカーテン><息><白い鳥たち><ハンカチ><天の川><白く笑う><百木蓮(びゃくもくれん) 大学の同期生がふたり、24歳と23歳で、バスの転覆事故と兵役中の事故で亡くなったそうです><糖衣錠(とういじょう)>

 嘆きと愚痴、観察があります。そして、孤独です。

<角砂糖 (9歳のころの思い出です)><灯(あかり)たち>

 詩を文章にしてあります。初めて見る手法です。

<幾千もの銀色の点が>

 全体のこととして、内容は暗い。

 この世には、暗い人もいれば、明るい人もいる。

 その違いは、どこからくるのだろう。

 成育歴からなのでしょう。

 こどものころから、死が身近にある人は、考え深く、雰囲気が暗くなる気がします。

<輝き><白い石><白い骨>

 全体の配分として、書いてあることは、作者自身のために書いてある文章です。

<砂>

 体を砂にたとえる。体は、もろい。

<白髪><雲><白熱灯><白夜>

 世界観として、白い風景、白い光景があります。

<光の島>

 抽象的です。

 病的なものが感じられる。

<舞い散る><静けさに><境界><芦原)><白い蝶><魂><米と飯>


(3 すべての、白いものたちの)

 母は、女児を死産したあと、翌年男児を早産して、やはり死産だった。

 その3年後、作者が誕生した。

 そのまた4年後、作者の弟が誕生した。

 死産だった姉がもし生きていたらという仮定が延々と続きます。

 <あなたの目>

 姉の目で、まわりにあるものを見る。

 <寿衣(じゅい。白い死に装束(しょうぞく))>

 産着(うぶぎ)が、寿衣になった。父は、姉を山に埋めた。

 <お姉ちゃん><白紙の上に書かれたいくつかの言葉のように。><白服><煙 (「チマチョゴリ」というものを私は、ひとつの民族衣装ととらえていました。チマ=スカート、チョゴリ=上着でした)><沈黙><下の歯 (作者には、執筆当時12歳のこどもさんがいます)><わかれ>

 姉の死をひきずっている作者です。

 <すべての、白いものたちの>

 おわりました。


(作家の言葉)

 ポーランドのことが書いてあります。

 作者の作品、『少年が来る』:2014年韓国で発行(平成26年)

 光州事件(こうしゅう事件)が題材:1980年(日本だと昭和55年)5月18日~同月27日に韓国光州市を中心にして起きた事件

 軍事政権に対して、民主化要求の蜂起があった。(民衆が、いっせいに立ち上がった)

 韓国軍は、民衆を大量虐殺した。

 韓国語で、『白』を意味する言葉です。

 ハヤン(まっしろな):ひたすら清潔な白

 ヒン(しろい):生と死の寂しさをこもごもたたえた色。こもごも:さまざまな感情がこもっている。

(『すべての、白いものたちへの』への補足 (訳者)斎藤真理子)

 死産だった姉=作者という考察です。


(解説 恢復と自己貸与 平野啓一郎)

 失われた存在を現在の存在が代理し得るとあります。

 凡人には、なかなかそこまでのことを思いこめません。

 わたしが思うに、わたしはわたし、あなたはあなたなのです。

 ただ、感じることはできます。

☆いつも見てくださってありがとうございます♬