「おくりびと」本と映画

熊太郎

「おくりびと」本と映画


2012年(平成24年)7月に読んだ本の感想記録です。

おくりびと 百瀬しのぶ(ももせ・しのぶ) 小学館文庫 ノベライズ:2008年(平成20年)の映画を小説化してあるもの


 すばらしい出だしです。大笑いしました。舞台は山形県、主人公は大悟さん、納棺師業の会社社長が佐々木生栄さん、先輩職員が上村百合子さんです。

 オーケストラの「解散」という言葉にはホームレス中学生の田村裕さん(たむら・ひろしさん)が思い浮かびました。

 この物語を読んでいるときに、ビッグバンドジャズのコンサートを聴きに行きました。

 大悟さんは、本来チェロリストです。オーケストラが解散するということが身近に感じられました。


 大悟さんの奥さん美香さんは、なんていい人なのでしょう。

 白鳥(はくちょう)の仲の良さとか、親子でかわした石による手紙のやりとりが伏線になっていきます。

 読み始めのあたりで、結末はどうもっていくのだろうかと興味津々(しんしん)でした。


 銭湯での葬式は若い頃に見かけたことがあります。銭湯通いだったわたしが、洗面器を小脇に抱えて、のれんをくぐると、脱衣所の奥に棺(ひつぎ)が据えてあり、葬式会場になっていました。


 テーマは「命」です。

 大悟さんが6歳のときに失踪した父親を殴りたい気持ちは痛いほどわかります。

 わたし自身の体験になりますが、父が病死したときに中学1年12歳だったわたしは、自宅に安置された父親の遺体に向かって、仁王(におう)立ちになりげんこつを握り締めながら、これからどうやって生活していくのだと強い怒りをぶつけていました。


 奥さんである美香さんの大悟さんの職業に対する偏見とも言える反対意見の表明は解(げ)せません。

 結婚生活は、相手が好きとか嫌いとかいう前に、働いて食べていけなければ話になりません。あきらめることも必要です。

 この物語に流れている太い芯は間違っておらず、正当です。



2015年(平成27年)8月に観た映画の感想記録です。

おくりびと 邦画 DVD


監督:滝田洋二郎

出演:本木雅弘、末広涼子、山崎努、峰岸徹、余貴美子、吉行和子、笹野高史


(観る前)

 小説は読んだことがありますが、内容をはっきり覚えていません。

 オーケストラでチェロを担当していた主人公の楽団がつぶれた。主人公は故郷の山形県へ帰って、納棺師(のうかんし。おくりびと)になった。


(観た後)

 今年観てよかった1本です。

 

「仕事」とは何かということに対する表現があります。

 志(こころざし)をもって働く。お金のためだけじゃない。

 やりがい。


 「家族」とはということに対する表現があります。

 対立するけれど許容する。


 「人」に対する「人生」の重みがあります。

 人にはやさしく。


 最初の納棺シーンとなるオカマのトメオくんへの儀式はやるせない。

 オーケストラの「解散!」は、ホームレス中学生を思い出しました。

 主人公夫婦がタコを海に放つシーンは、なんだかいい感じ。

 採用面接のやりとりが楽しくて面白くて笑いました。


 音楽劇でもあります。

 両手を合わせておがめばなんとかなるという勇気をさずけられます。

 人生は後悔が多い。


石文(いしぶみ):言葉のなかった時代、気持ちに合った石を拾って相手に渡す。

 最初の大きな石は、息子に大きくたくましく育てという意味でしょう。

 最後の小さな石は、父親から息子への「謝罪」の意味にとれました。