恍惚の人(こうこつのひと) 有吉佐和子

熊太郎


2012年(平成24年)8月に読んだ本の感想記録です。

恍惚の人(こうこつのひと) 有吉佐和子 新潮文庫


 恍惚=老人の認知症です。

 話は老妻の葬儀まで進みました。今はもう消えかかっている葬儀にまつわる昔のなりわいが記述されています。


 同じ敷地に別棟で住む姑(しゅうとめ)が亡くなり、残った認知症の舅(しゅうと)の世話は長男の嫁がするというところまできました。


 素朴な疑問として、なぜ舅のこどもたちである長男はじめそのきょうだいは親のめんどうを看(み)ないのか。

 世話をする嫁には相続をはじめとして、夫と共働きで得た家屋の所有権がないのか。

 社会的問題へメスが入り始めました。


 夫の父のめんどうをみるお嫁さんの苦労と自分や夫も認知症になるのではないかという不安と怖れ(おそれ)があります。


 厳格でわがままだった夫の父が幼児へと回帰する。

 自分のこどもたちの顔と名前を忘れる。


 さらに話は進み近所の高齢者女性から恋愛攻勢を受け始めたところまできました。

 老いたというのに妖艶(ようえん)なしぐさの女性がいます。

 さて、人はどのように老いていくべきなのかを考えるのです。


 後半部分はまるで別のお話のようです。

 最後には静かな平和が訪れます。

 「老いる」ということについて考えさせられました。


 1973年(昭和48年)公開の邦画を観たことがあります。森繁久彌さんと高峰秀子さんの白黒映画で、深刻な内容でした。


 長生きするって、なんなんだろうなあと思うのです。

 認知症で、自分のまわりにいる人がだれなのかがわからないとか、排せつ行為を本人が自分でコントロールできないとかの症状があります。

 人格が変わって、これまでとは違う別の人になってしまうのです。

 それでも長生きを続けることは、介護の責任を負う親族の立場にいる者にとっては、けっこうつらいものです。