不器用で ニシダ

不器用で ニシダ 角川書店
『本が読めない33歳が国語の教科書を読む かまど・みくのしん 大和書房 やまなし・少年の日の思い出・山月記・枕草子』という本から、こちらの本に来ました。
その本の230ページから、『特別編 本の作者と話してみる』が始まりました。
お笑いコンビ、『ラランド』のツッコミ担当ニシダ(男性のほう。相方は、女性のサーヤさん)さんが登場しました。ニシダさんは、読書好き芸人だそうです。また、ニシダさんは、本を書く人だそうです。
ニシダさんは、小学生の頃は、スペインやドイツに住んでいた。日本語に触れるために日本の本を読んでいたそうです。(そういう環境があるのか……)
では読み始めます。
「不器用で……」という言葉から、NHK朝ドラ「ばけばけ」に出ていた車夫(しゃふ。車引き)の男性の決めゼリフを思い出します。
車夫永見剣造(ながみ・けんぞう)を大西信満さんという役者さんが演じておられました。味わいがあるなかなかいいキャラクターでした。「(わたしは)不器用ですけん」の口癖が良かった。無口でまじめな個性の役柄でした。誠実な人柄です。
短編5本です。そのなかにこの本のタイトル「不器用で」はありません。
「遺影」
中学校での貧乏人女子イジメが素材です。
いじめをする男子グループがいます。
グループのボスが1年1組の短髪のリュウ、物語を語る主人公が、同じ組のユウシです。
ほかに、別の組のコウジとタケルです。
いじめられるのが、アミという女の子です。貧困です。
でも、ユウシもアミと同じくらい貧しい家庭にいるのです。それでも、アミよりはましな貧乏です。
タイトルにある「遺影」のとおり、生きているのにアミの遺影をつくって、アミの机の上に置くのです。
陰湿ないじめです。
この本を読む前に、あのちゃんの本を読みました。
中学校で、背中に指でなんと書いたか?というゲームがあったそうです。
あのちゃんは、中学でいじめにあって、2年生から不登校の引きこもりになりました。
クラスメートは、あのちゃんの背中に、「シネ(死ね)」と書いたそうです。
『哲学なんていらない哲学 あの KADOKAWA』
あのちゃんの心には、いじめをした人間たちに対する復讐心が生まれました。すさまじい復讐心です。本にはたたきつけるように憎しみがぶちまけてありました。
舞台は大規模団地で、アミの家は廃屋の戸建てです。
遺影をつくることになったけれど、ユウシは遺影のつくり方がわからない。
お金もない。(結局、母親の財布から1500円を盗みました)
なんのために遺影をつくるのか。
自分もアミも同じような貧乏暮らしをしているが、アミのほうが貧乏だ。(自分より下の階級の人間をつくって、自分の境遇をよく見せたい)
ボスのリュウに言われたからアミの遺影をつくる。(仲良しグループの中にいたい)
中学生男子の残酷さを表現してあります。
ひどいことをする生徒たちです。
この短編は、クズ人間を描く(えがく)本なのか。
作者には充実した文才があります。
されど、作品の内容に嫌悪する36ページ付近です。
お金がなければ、そして、お金がほしければ、働けばいい。
盗んだらダメです。
オチは、妥当(だとう。当然、あたりまえ、適切)でした。
アミの遺影は完成しませんでした。
「アクアリウム」
アクアリウム:水槽。水生生物の飼育設備
グロテスク感がある内容でした。不気味です。
おもに、中学校生活の思い出を語る高校生時代の主人公がいて、そこから、大学生になった今がありますが、男子大学生の田邊は、自殺志願者です。
生物実験室にいる高校2年生の田邊です。
生物部のメンバーの同級生として波多野がいます。彼もまた風変りです。(地震が起きた時に飼育している魚たちを死なせてしまう)
活動として、買って来たシラス干し(イワシの稚魚(ちぎょ))の袋の中から、珍しい魚の個体を見つける。(その作業中に主人公の頭には、「死ね」という言葉が浮かぶ)
ときには、顧問の先生もいっしょに魚釣りに行く。
グロくなるのは、釣ったクロダイの腹から(解剖していた)人間の小指の先が出てきたのです。どうも、魚に食いちぎられたらしい。(そんなことがあるのかどうかわかりませんが……)
そんな経過が書いてあります。
学校が舞台の話が続きました。
もう年寄りになったわたしにとって、「学校」は遠い存在です。
学校を出てからがほんとうの人生の始まりです。
学校のことはもう忘れたい。
そんな気持ちで読む読書でした。
洋菓子のアソート:詰め合わせ(釣った魚を解剖して、内臓を並べて詰めるときの状態が似ていると表現します)
解剖のさいちゅうに、う~む。キモイなあ。「赤く溶けかけた人間の指」が、クロダイの内臓から出てきました。
大学生になった田邊はメンタルをやられています。メンタルの病気で医者に通院しています。
大学生だけど、大学には行けていません。悶々(もんもん)とした日々を送っています。もんもん:悩みでいっぱい。気持ちが晴れない。
中学生の心の中にあるようすを克明に文章化してあります。こくめい:こと細かく
自殺したい人の気持ちについての問題提起と受け止めました。
うまく表現してあります。
「焼け石」
サウナ室でバイトとして働く女子大生の恋話でした。
男性の裸体がずらりと並んだサウナ室に入って行って、マット等を交換する作業です。
年下男子大学生とペアになって働く主人公の美沙です。
美沙は、大学生の男と同棲しています。(親が出してくれたお金を使って、男女で暮らす。わたしからすれば、変ですなあ)
その男が、美沙以外の女性から付き合いたいと告白されています。
告白したのは、美沙がケンカ別れした昔の女友だちで智恵里です。恋のライバルですな。
短い文章ですが、出てくる人物の数は多い。
GPA:Grade Point Average 大学の成績評価
男性である作者が、女性である主人公の心理を表現します。
主人公の美沙は、時給の良さ、労働時間の自由がきくという理由で、男たちの裸の中での仕事をがまんしてやっています。
文字数は多い作品群ですが読みやすいリズム感のある文章です。好感をもちます。
ただ、「説明」が多い文章でもあります。
別れてカレシをチェンジする話でした。コイバナですなあ。
「テトロドトキシン」
たばこの煙がまん延する短編小説で、男女のからみがあります。う~む。におってくる。
27歳のだらしない男です。
大学を出て営業職のサラリーマンになって、エッチ目的の婚活アプリに登録して、偽名を使って女遊びです。
もう三ケタの女性と寝たそうです。それが、彼の自慢です。
女のほうもそんな感じで生きているような女性が複数出てきます。
あいかわらず登場人物名は多い。
高校の同窓会もあります。
タイトルにある「テトロドトキシン」は、フグの毒です。
この短編の趣旨は、自殺行為をしている男を描く(えがく)ことです。
男の口の中、左上の奥歯から2本目あたりがおかしくなっているという話から始まります。
実はそのほかの歯もおかしくなっていて、歯の根元のあたりから歯が折れてなくなって、根本だけが残っているという歯の病気にかかっています。
歯の治療を半分放棄しているような状態が、命を縮めて、死に至るそうです。
自家中毒による自殺を、フグの毒である「テトロドトキシン」で表現してあるようです。
主人公の口の中はくさい。肉の腐るようなにおいがするそうな。
イヤですなあ。
喫煙所を行ったり来たりする毎日です。
女性の喫煙者も同様でしょう。
なにかしら、むなしさ、「虚無(きょむ)」がただよっています。
顎(あご)のラインが腫れている(はれている)。
弄り合う(いじりあう):二十代後半の男女が、体をいじりあいながら、ラブホテルに入って行くのです。そして体を寄せ合って、弄ぶ(もてあそぶ)のです。そんな表現がある文章です。
心象風景を描くような文章です。心象風景:しんしょうふうけい。現実ではない。脳みその中にある風景。架空の景色
歯の治療をしないことで、消極的な自死をめざす主人公です。
もう生き続けてもしょうがないのです。
喫煙行為は自殺行為でもあるし、他者も殺します。
人間にとっては、毒も必要悪なのか。
ちょっとむずかしかった。
主人公の彼はさいごに、「生きてみようかと思った」となっていてほしい。
27歳、まだまだやりなおしがきく年齢です。
スタンションポール:誘導、保護用の縦型支柱。行列整理用に置くポール
「濡れ鼠(ぬれねずみ)」
短編集最後の作品です。
読んでいる途中は、あまりいい気分がしませんでしたが、読み終えた瞬間は、さわやかな風が心の中を吹きました。
太宰治作品「走れメロス」とあい通じるものがありました。
相手を「信じる」ということは、生きていくうえでとてもだいじです。
年の離れた同棲カップルです。
男が37歳、女が25歳で同居しています。
女のほうの事情で、女は昼間の仕事から転職して夜の仕事、バー(酒場)で、バーテンをします。学生時代アルバイトでしていたそうです。
半日ぐらいすれ違いの生活が始まったカップルです。
男は女と過ごす時間が減ります。男の心は不安定になります。
男のやきもち(嫉妬しっと)のようなものがあるのですが、現実をふりかえると、自分が思うほど自分の相手は、異性にはモテていないということはあります。人それぞれ好みのタイプは異なります。世の中は、うまくできているのです。
剽窃(ひょうせつ):他人がつくったものを盗んで使う。文章、語句、説(せつ)など。
鼎談(ていだん):三人が向かい合って話をすること。
主人公である大学の先生37歳男性のひとり語りが続きます。
ヨーロッパに関する歴史の先生です。専門的な内容で、読んでいてもなんだかわからない。
パートナーの女性がらみで心が不安定になっているので、ご本人も自分が何を言っているのかわからなくなっているようすがみられます。
主人公は、中年男性であるがゆえに、25歳の若いパートナーとの年齢差に不安を感じておられます。揺れ動く男の気持ちがあります。焦っています(あせっています)。
主人公の世界に、バーが存在した体験がありません。主人公は酒を飲みません。
同棲相手の女性が仕事に出たまま連絡がとれなくなる。
パートナーの浮気を疑う主人公の大学の先生男子でした。
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