この素晴らしき世界 東野幸治 新潮文庫

熊太郎

2023年(令和5年)3月に読んだ本の感想記録です。


この素晴らしき世界 東野幸治 新潮文庫


 令和2年(2020年)の単行本を令和4年(2022年)に文庫化してあります。

 週刊新潮連載記事のまとめです。


 わたしは、旅に興味があるので、岡村隆史さんとの番組『旅猿』で東野幸治さんを見るぐらいで、そのほかの東野さんの番組は見ていません。

 個人を巡るエッセイ(きままな文章)のようです。

 読み始めます。


 西川きよしさんの前立腺がん治療話が目を引きました。前立腺を全部摘出です。術後は尿漏れに苦しみますが、尿を人工的に調節してくれる機械を埋め込む手術をされています。「人工尿道括約筋」の手術だそうです。睾丸に(こうがん。なんとか玉)に機械が埋め込まれました。小さなボタン電池ぐらいの大きさだそうです。快適だそうです。(ほーっ。そんなことができるのか)


 坂田師匠の記述のところで、中川家の剛(つよし)さんが、パニック障害になっていたと書いてあります。そういえばそういう病名を昔しょっちゅう見かけた時期がありました。最近は聞かなくなりました。

 

 東野さんによる文章の内容には『毒』はありません。軽いタッチで文章が続いています。


 品川祐(しながわ・ひろし)さんという方は、番組『アメトーク』で見ます。

 「嫌われ芸人」という立ち位置が批判されることは、理由がよくわかりません。笑いをとるための手段だから、仕事だと思うのです。だれもが、自分ではない何者かを演じています。品川祐さんのあだ名は『おしゃべりクソ野郎』だそうです。


 ほんこんさんは、番組『旅猿』で見て知りました。湘南でサーフィンをされていました。

 変わったお名前です。『130R』というコンビを組んでいて、相方が、板尾創路(いたお・いつじ)さんだそうです。でももう何年もコンビで活動はしていないそうです。


 東野幸治さんの記述は、お笑いの歴史です。東野さんは、歴史の生き字引です。長く続けることが仕事で成功するコツです。

 

 メッセンジャー黒田さんも番組『旅猿』でよくお見かけします。この本は、旅猿仲間の紹介の側面があります。

 黒田さんの言葉として『東京の番組はしょーもない! カンペに書かれたこと喋ってる(しゃべってる)だけやろ! ……』(そうなのか。カンペ:演者に伝達する手段。スケッチブック、大きな紙など。メッセージや指示を送る)


 東野さんが自分のことを『心無い私』(昔はそうだったらしい。自己中心的ということか)


 ダイノジ大谷さんという人は、エアギターという演技で世界一になったというニュースを聞いたことがありました。

 ふたり組だということは、この本を見て初めて知りました。

 コンビ名:ダイノジ。ふたりとも大分県出身1994年(平成6年)から活動開始。

 大谷ノブ彦:この本では、おもに大谷さんについて書いてあります。(最後にご本人が「息子が登校拒否になっちゃいました」とコメントがあり心配しました)

 大地洋輔(おおち・おうすけ):こちらが、エアギター世界一になった方(かた)

 

 55ページに『ピコ太郎』さんというお名前が出てきます。

 

 桂三度さん(世界のナベアツ)の『イチ、ニィ、サーン! シー、ゴ、ロクー』は、おもしろかった。

 大阪府守口市にある梶中学校卒の芸人さんたちのことは初めて知りました。桂三度さん、ますだおかだの増田英彦さん、中川家(兄の剛(つよし)、弟の礼二)さん。


 大西ライオンという人は知りませんが、読んでいると「不思議な人」に思えました。

 蛍原徹(ほとはら・とおる)さんの誕生日祝いに買うケーキ代を集めるのに、サプライズ企画(本人は知らない)なのに、大西ライオンさんは、蛍原さんにケーキ代の集金に回っています。

 大西ライオンさんのお父さんが酒乱だったことには同情します。


 なかやまきんに君が福岡県出身だということは知りませんでした。福岡県は、芸能界で働く人材が豊富です。

 今年(2023年)2月に博多駅周辺を散策したのですが、なにせ華やかです。人は多いし、来ている洋服のファッションがいいし、文化的で、勢いがあります。外国人も多い。新しいものが生まれる下地があります。

 

 藤井隆さんは番組『新婚さんいらっしゃい』で井上咲楽さんとお見かけします。

 藤井隆さんは、奇人だそうです。1990年代のオカマみたいなキャラクターのときは覚えています。なんだか不思議に思えました。じっさいは、オカマではないそうです。エキセントリック(奇妙)になって、笑いをとる手法だったそうです。(2025年に藤井隆さんが出ている舞台を観劇しました。藤井さんはテレビと違って普通の演技をしておられたので不思議でした)

 

 山里亮太さんについては、ご本人が書いた本を読んだことがあります。最初に組んだ漫才の相方にかなりひどいことをされています。(その後の相方であるしずちゃんではありませんが、しずちゃんにもひどいことをされています)

 『天才はあきらめた 山里亮太 朝日文庫』

 芸の根っこが、仕返しで、ねたみとかうらみを晴らすことが目標でした。

 

 この本を読むのには、時間がかかります。

 すき間時間を利用しながら少しずつ読み進めています。


 ピース綾部さんは、芥川賞作家の又吉直樹さんに養われているイメージがあります。まあ、漫才のコンビというものは、金銭的にはそういうものなのでしょう。ニューヨークにおられるそうですが、孤独なんじゃないだろうか。


 平成ノブシコブシの吉村崇さんも番組『旅猿』でお見かけしました。長崎県への旅でした。

 番組を観た時は『破天荒の人(はてんこうのひと)』の意味がわからなかったのですが、この本を読んでわかりました。常識では考えられない無謀なことをするのですな。

 乱暴な金遣い(かねづかい)は、笑いにつながる。東野さんは吉村さんを『馬鹿天狗(ばかてんぐ)』と分析・評価されています。

 本人のコメントがいい。『……極楽っていうのは地獄の先にあるんだなと……』


 著者がお笑いの世界が好きだということが伝わってくる文脈です。

 サラリーマンの世界とは違います。

 逆に、サラリーマンはやれない人たちです。

 著者いわく「奇人変人だらけの吉本芸人……」です。ただ、一般社会でも奇人変人はよく見かけます。見た目だけでは、すぐにはわからないこともあります。

 

 トミーズ健さんという方のお話です。わたしは存じ上げません。

 トミーズ雅(まさ)さんのほうはわかります。

 トミーズ健さんは、2人兄弟だったが、中学生のときにお父さんから、実は、一番下にもうひとり弟がいると告げられます。怖い話です。貧乏暮らしだったので、一番下の子は施設に預けてあったそうです。

 貧乏話が出ます。おもしろい。ただ、これぐらいの年齢の人たちは(1959年生まれ)同じような貧乏体験をもっていると思います。

 貧しかったことは思い出したくないので人には話さないということはあります。

 本では、家にフロがなくて、銭湯に行くお金もなくて、13歳まで、家の前で素っ裸になって、フロ代わりに、たらいで水浴び、行水(ぎょうずい)をしていたそうです。


 わたしも小学二年生ぐらいのとき、自分が中学の時に病気で死んでしまいましたが、当時35歳ぐらいだったおやじに連れられて、近所にある池につかって、池をフロ代わりにしたことがあります。とてもイヤでした。読んでいて、ふと思い出してしまいました。せめて、川にして欲しかった。池はため池のような、緑色の水面の色でした。


 トミーズ健さんのクリスマスのごちそうは、ブタの頭をまるまるボイルしたものだったそうです。わたしも思い出しました。おやじが持って帰って来たのは豚足(トンソク)でした。


 ホラーのような恐ろしい話が出ます。弟さんの中指が工場で作業中に切断されて、切れた指をおなかにくっつけて、育てて、もとの指に戻すという治療です。


 奇人変人の芸人さんたちもそれなりに大変ですが、芸人さんたちを管理監督してコントロールしていく会社スタッフの苦労も並大抵ではありません。最後は、笑って済ませるのでしょうが、大変です。

 濃厚なお話でした。


 「チッチキチー」の大木こだまさんです。

 東野さんによるお笑い芸人さんの戸籍を見るような記録が続きます。

 大木こだまさんは、娘さんのことを大事にされています。いいお父さんだと思います。

 この本が出た当時は、愛するご長女の孫である3歳女児と1歳男児を可愛がっておられます。幸せそうです。


 ガンバレルーヤよしこさんの邦画を観たことがあります。『Bの戦場』でした。なかなかおもしろかった。タイトルの意味は「ブスの戦場」ということでした。ぶさいくだけど恋愛でがんばるのです。速水もこみちさんが出て三角関係でした。


 宮川大助・花子さんのお話はドラマです。知りませんでした。

 漫才が完成されるまでの試行錯誤の歴史があります。

 昔の漫才のパターンは、今とは逆で、大助さんがおしゃべりで、花子さんが無口だった。

 ふたりは、漫才をしていない時期があった。ふたりで、同じ警備会社で働かれています。花子さんは、漫才よりも娘さんの子育てをしたかった。

 大助さんがどうしても漫才をやりたかった。漫才に取り組む大助さんはいわゆる『仕事人間』です。漫才という仕事に取り組む鬼です。夫婦のどつき漫才です。暴力的です。昔、そういう夫婦漫才がありました。正司敏江・玲児さんでした。(しょうじとしえ・れいじ。もうおふたりともお亡くなりになりました)


 加藤浩次さんです。

 読んでいると、まあ、やりたい放題です。苦労もされています。

 狂っていると思われることもあります。(コンパで女の子を泣かして、飲食したお金を要求することとなど)


 響いた言葉として『北海道からスター夢見てやって来て、馬鹿にされたくない感がバリバリ出てて、田舎者丸出しでイキがっていた』

 読んでいると又吉直樹作品『火花』を思い出します。

 加藤さんはなかなか予定調和ができない人です。 なにをするかわからない、先が見えない笑いを追いかけます。狂気の笑いです。

 そんな人が、長い間朝の情報番組を続けてこられたわけですから、実績を根拠にすると、根っこは、まじめな人だと判断します。

 

 最後は、キングコングの西野亮廣(にしの・あきひろ)さんが、著者の東野幸治さんについて書かれています。

 東野さんは「いい人ポイントがない変人」ですが「実力がある変人」であるそうです。

 東野さんは、複雑なのか、シンプルなのか。

 複数人格者のように書いてあります。


 もうひとり平成ノブシコブシの徳井健太さんがコメントされています。

 徳井さんは、太川陽介さんのバス旅とか、麻雀の番組でお見かけしたことがあります。

 徳井健太さんは、北海道別海町出身だそうです。人口1万5000人、牛が12万頭いるそうです。


 徳井健太さんのコメントが真剣に書いてあります。

 東野さんの言葉として『面白い芸人はいくら時間がかかっても絶対に売れる』

 内容を読んでいて、お笑いコンビ「ハライチ」の澤部佑(さわべ・ゆう)さんのことが書かれていた本を思い出しました。『僕の人生には事件が起きない 岩井勇気 新潮社』です。

 岩井さんいわく、澤部佑さんには独自の個性がないそうです。だれかのまねをしている。そのときそのときで、だれかのまねをしながら自分ではない自分のようなものを演じている。

 憑依とか(ひょうい。のりうつるとか)洗脳(せんのう。指示に従って暗示をかけられて動く)のような状態だそうです。

 東野幸治さんもそうらしい。自分ではないだれかを演じている人が、お笑い芸人であり芸能人でありタレントなのでしょう。

 作品『コンビニ人間』を思い出しました。『コンビニ人間 村田紗耶香(むらた・さやか) 文藝春秋』無個性の人間が人まねで、自分を演じるのです。